研究所に帰ってからもずっと考え込んでいた。でも、何も答えは見つからない。
とにかく今はあたしでも強くなれるって信じるしかない。
ここでリーラヴは考えるのをやめ、寝ることにした。
「明日は卒業式か…」
壁に貼ってあるカレンダーを見ながら、リーラヴはそう言った。
翌日。卒業式にはたくさんの親子がいた。でも、リーラヴの両親はいない。
「あのバカオヤジ…今日ぐらい来てくれったっていいのに…」
リーラヴはそうつぶやいた。
「みなさん、卒業おめでとうございます。では、みなさんお待ちかねですね?
この学校の中庭か温室の中からポケモンを1匹選んでくださいね」
その言葉を合図に卒業生たちはみんな走り出した。目をつけてるポケモンを
他の人に取られないようにするためだ。でも、リーラヴだけは普通に歩いていった。
リーラヴは何の考えもなく、なんとなくで温室に行った。中は卒業生でごった返していた。
親が「これがいい」「これはダメ」とか言っているところも少なくなかった。
子供に決めさせればいいのに…。そう思うと、オヤジが来なくて良かったと思えた。
10分もすると、半分ぐらいの子はポケモンを決めていた。
一方、リーラヴはというと温室内のベンチに腰をかけ、いろんなポケモンたちを眺めていた。
ポケモンを見れば、その子の性格、強さとかがわかる。それもリーラヴがつちかった力だ。
ポケモンたちをながめているリーラヴ。そのとき、1匹のポケモンが目に入った。
黄緑色の体に青々しい大きな1枚の葉っぱ。チコリータだ…。
でも、その体にはキズがたくさんあった。他の子供たちは、そばを通っても見向きもしない
。…あの子が…例のいじめられてる…。リーラヴはしばらくチコリータを見ていた。
リーラヴはチコリータに話しかけてみることにした。
そのときには、もうほとんどの人が温室の外に出ていた。
「ねぇチコリータ。どうしていじめられてるの?」
『え?あなた誰?』
「あぁ、あたしはリーラヴ。ここの生徒…いや、もう卒業生だね」
『ポケモンの言葉がわかるの!?』
チコリータはびっくりしているようだ。しかし、リーラヴは平然としていた。
「うん。ねぇ、教えて。どうしていじめられてるの?」
『わかんない』
チコリータは少し戸惑いながら言った。
「そっか…」
『でも…どうしてそんなこと聞くの?』
「えっ…?」
リーラヴは少し迷った。正直、自分でも何でこんなことを聞いたのか、よくわからなかった。
「えぇっと…ポケモンでもいじめってあるんだな~と思ってさ」
リーラヴは半分テキトーに答えた。
『うん…そういえば、今年の卒業生にはいじめられてる子がいるって聞いたけど?』
「あぁ、それ多分あたしのことだ」
リーラヴはしぶしぶ言った。
『えっ!?』
「この白髪のせいでいじめられたんだ」
『そうなんだ…』
「同じ…だね」
チコリータはその言葉を聞いてリーラヴをじっと見た。
『うん』
それから10分ぐらい話をした。そして、ある考えがリーラヴの頭をよぎった。
「ねぇ…チコリータ。あたしといっしょに来ない?」
『えっ!?』
突然の話に驚くチコリータ。しかし、リーラヴはそんなことお構いなしに話を続けた。
「あたしといっしょに旅して強くなろう!」
『でも…私なんかが強くなれるのかな』
「わからない…でも信じるの!強くなれるって!」
『でも…』
いつまでもうじうじしているチコリータを見て、リーラヴは少しカッとなった。
「でもじゃないの!やってみなきゃわからないでしょ?それともチコリータは弱いままでいいの!?」
それを聞いたチコリータは即答した。
『そんなのヤダ!!』
「じゃあ…行こうよ。強くなってあたしたちをいじめたやつらを見返してやるんだ!」
『うん!』
チコリータはうれしそうにそう言った。