コサブロウに連れられて家までやって来たリーラヴたち。さて、コサブロウの家は…。
「リーラヴさん。ここが僕の家です」
「えっ!?」
リーラヴは自分の目を疑った。それもそのはず。リーラヴたちの目の前にあったのはとても大きくて豪華な家。
広い庭にはプールまで付いている。コサブロウは実はおぼっちゃまだったのだ。
リーラヴは口をパクパクさせていた。
「…あ、やっぱりびっくりしてますよね…学校の友達とか連れてくると
みんなびっくりしてひいちゃうんですよ」
リーラヴを見たコサブロウは微笑しながらそう言った。
「そりゃ…ひくでしょ…こりゃ」
リーラヴは家(つーか城!?)から目を離さずに言った。
とりあえず中に入らせてもらったリーラヴ。中もとても豪華な造りだった。どこまでも続く廊下。
天井には大きくてきれいなシャンデリア。コサブロウがお金を要求されていた理由がわかった。
すると廊下の向こうのから誰かやってきた。
「おかえりなさいませ。おぼっちゃま」
その人は灰色の髪をした細身の老人…執事といったところだろうか。
「おじい!」
「おぼっちゃま…そちらの方は?」
その人はリーラヴを見て言った。
「ポケモンマスターのリーラヴさん。僕が招待したんだ」
「あ、りっリーラヴと言います」
リーラヴは緊張してしまってうまくしゃべれなかった。
「そうですか…では」
その人はリーラヴたちに軽くお辞儀をして去っていった。
「リーラヴさ~ん。こっちですよ~」
「う~さすがに広いなこの家…よく迷わないね」
リーラヴはキョロキョロしながら言った。
「あ、この部屋が空いてますよ」
コサブロウはバッグから鍵を出した。しかしそれにはおそらくこの家の部屋すべての鍵が
付いているようでこの部屋の鍵を見つけるのに手間取った。
「えぇっと…ここの鍵…あった!これだ!」
コサブロウはたくさんある鍵の中から1つの鍵を取り出し鍵穴に入れた。 ガチャッ
「どうぞ。入ってください」
「ありがと」
リーラヴたちが入った部屋は普通の家のリビングの2倍ぐらいはあった。
リーラヴは部屋にあった大きなベッドに腰をかけた。
そして一息つき「さてと、こんな大きな家に入れさせてもらっちゃったし、
昔のこと…話そうかな」と言った。
「一応言っとくけど日が暮れるぐらい長くなると思うよ」
「大丈夫です!今日、暇なので…」
リーラヴはニコッと笑った。
「そっか。わかった。それは…―」
―それはあたしが10歳のとき。
あたしは親が離婚していて母親は行方不明、父親はシンオウ地方の名もない森を所有していて、
そこの自然を守っている。母親について知っていることはマサラタウン出身で
電気ポケモンの使い手だということだけ。あたしが生まれたのはマサラタウン。
あたしは物心ついたときからオーキド研究所に居候させてもらってた。
あたしは近くのトレーナースクールに通いながら、研究所で手伝いをしていた。
小さい頃から研究所のポケモンたちと触れ合ってたおかげか、あたしはポケモンの言葉が
わかるようになった。あたしはもうすぐトレーナースクール卒業。あたしが行っている学校は
卒業するときにポケモンを1匹くれる。だから、卒業式の日が旅立ちの日になる人が多い。
さて、あたしのスクールライフはというと…
ドンッ
「きゃぁっ!」
ガシャァン
「ほーら、白髪のおばぁちゃーん。おれたちにはむかうからそうなるんだよ~」
リーラヴは他の生徒たちに囲まれていた。それは男子だけではなく、女子の姿もあった。
「げっ俺の服、お前の血がついちまったじゃねえかよ」
「うっわ、最悪~責任取らなきゃぁ~…じゃあ私たち全員分のおやつ買ってきて~」
「さすがにおばぁちゃんにそれはきついでちゅよ~」
1人の男子の言葉に教室中の子供たちが笑った。
「…なによ…」
リーラヴは呟いた。
「ん?何か言ったか?ばぁちゃん」
「あたしが何したっていうのよ!!」
リーラヴはそう叫び、みんなをにらみつけた。
「うっざ~気付いてないの?あんた、みんなの足引っ張ってんのよ?
ノロいし、白髪だし、何1ついいとこないじゃ~ん」
「お前がトレーナーになってもどうせ弱いんだろ?ポケモンがかわいそうだぜ」
「そうだ!こいつにはあの子がピッタリよ。温室にいて、いつもほかのポケモンにいじめられてるやつ!」
「あぁ、メスのチコリータだろ?あいつメッチャ弱いよな~こいつにピッタリだぜ」
教室にまた笑いが起きた。
リーラヴは下を向いた。
帰り道。リーラヴは考え事をしていた。
あたしはなんでいじめられてるんだろう。弱いから?どうすればいい?
どうすればあたしは強くなれる?たしかにみんなの言うとおり、ずっと弱いままかもしれない。
ポケモンはこんなあたしについてきてくれる?ダメだ。あたしは弱いから。
オーキド博士は『ポケモンには無限の可能性がある』って言ってたけど、人にはあるのかな。
あたしにもあるのかな。あるって…信じたいよ…。